ビジネスに関する資格はいろいろありますが、その多くが、ひとつの業界に特化したものです。ですが最近、「どんな業界に転職しても役立つ」と注目を集めている資格があります。それが「PMP」です。
「PMP」はプロジェクト管理に関する資格で、特定の業界だけで通用するというものではありません。また、グローバルに通用する資格でもあります。
そこで今回は、PMPの概要や取得するメリットのほか、取得方法について解説します。
PMPはグローバルに通用する資格
PMPは、「Project Management Professional」の頭文字を取った言葉で、プロジェクトマネジメントの専門家であることを証明する資格です。
PMPを認定しているのは、アメリカの非営利団体である「PMI(Project Management Institute:プロジェクトマネジメント協会)本部」で、1998年に日本支部が設立されています。世界的に活動する団体が認定していることから、PMPはグローバルな資格であるといえるでしょう。
PMPは「PMBOK(Project Management Body of Knowledge)ガイド」に則って認定される資格です。PMBOKガイドは、PMI本部が世界中のプロジェクト事例をもとにノウハウや手法を体系化した知識のことを指します。現在では、世界標準として認められており、国や文化の垣根を越えてプロジェクトマネジメントの能力を測る手段として評価されているのです。
なお、PMPは一度取ってしまえば終わりという資格ではなく、3年ごとに更新しなければなりません。PMP取得後も継続的な学習・研修プログラムの履修が求められるのです。このPMPを維持・更新するための要件が「CCR(Continuing Certification Requirements Program)」です。
「CCR」は「PDU(Professional Development Units)」という単位で計算され、資格取得後、3年間で60PDU取得する必要があります。この要件を達成できなければ、PMPの資格を失うことになるのです。
PDUは、プログラムの受講やトレーニングへの参加といった学習活動のほか、プロジェクトマネジメントに関するブログの執筆、ウェビナーの受講や開催といった自己知識の共有によって取得できます。
そのため、PMPを維持するためには、資格認定後も継続してプロジェクトマネジメントに関わる必要があるといえるでしょう。
PMPは業種・職種を選ばない
PMPは業種・職種を選ばない汎用的な資格であるといえます。なぜなら、重要なプロジェクトを円滑に進める管理者として、幅広い分野で活躍できるためです。
そもそも、プロジェクトとは期日の定められた仕事全般を指すため、どのような業種・職種であっても関わる可能性があります。プロジェクトを成功に導くためには、スケジュールやメンバーの業務内容の割り振りのほか、コストや納期などを包括して管理する役割が必要です。また、クライアントの要望に応えるためには、リスク管理など多角的な視点も要求されるでしょう。
PMPの資格を保有することは、このようなプロジェクト管理のプロフェッショナルとして認められたということなのです。
だからこそ、PMPは業種や職種を問わない資格であり、官公庁などではPMP資格が必須とされるプロジェクトも少なくありません。
PMPを取得するメリット
PMPを取得すると、「業務が円滑に進む」「スキルアップ・キャリアアップにつながる」といったメリットがあります。それぞれのメリットを、もう少し具体的に解説しましょう。
業務が円滑に進む
PMPの資格を取得することで、業務をスムーズに進められます。
PMP認定のために勉強することになるPMBOKは、多くのプロジェクト事例をもとに作成された体系的知識です。これらの豊富な知識を持つPMP保有者であれば、何も知識がない人に比べてプロジェクトの立案・推進をスムーズにこなせます。プロジェクト進行中につまずきがあった場合にも、専門的な知識を持っていればより効果的な打開策を見つけられるはずです。
また、PMBOKで定義された用語を適切に使えば、チームメンバーやクライアントとのコミュニケーションを円滑に行えます。
そもそも、一口にプロジェクト管理といっても、そのイメージは人によって異なるでしょう。プロジェクト進行に関する言語をチーム内で統一しなければ、コミュニケーションの齟齬が起きる可能性も少なくありません。
しかし、PMBOKの知識があれば、メンバーやクライアントとのあいだでプロジェクトに対する共通言語を作り出すことが可能です。お互いの意思を正確に伝えながらプロジェクトを進められるため、業務の漏れや失敗を減らすことにもつながるでしょう。
スキルアップ・キャリアアップにつながる
PMPの資格は、スキルアップやキャリアアップの点でも有用です。
プロジェクトマネジメントに関するスキルは、求職者が言語化してアピールしづらいポイントといえます。例えば、単純に「スケジュール管理が得意」「リーダーシップがある」といったアピールだけでは、説得力が弱いかもしれません。しかし、PMPの資格を所持していれば、プロジェクトマネジメントの知識があることを証明でき、昇進や転職で有利に働きます。
また、PMPを取得するには、プロジェクトマネジメントを体系的に身につける必要があるため、取得すれば業務の効率化にも役立つことは間違いありません。さらに、PMBOKの知識に自身の経験をミックスし、プロジェクトマネジメントに関する新たな方法論を再構築すれば、誰にもまねできない強力な武器となるでしょう。
一方で、PMPはグローバルに活躍する企業への転職にも役立ちます。PMPはアメリカのPMI本部で認定される資格であるため、取得していれば他国の人材からも信頼されます。グローバルな企業への転職を考えている人は、PMPの取得を視野に入れてもいいかもしれません。
PMPの受験資格
PMPを受験するには、「プロジェクトマネジメントの実務経験」とPMI本部が認定する「公式研修の受講」という、2つの要件を満たす必要があります。それぞれについて具体的に解説します。
プロジェクトマネジメントの実務経験
PMPを受験するにはプロジェクトリーダーとしての実務経験を提示する必要があります。受験資格を満たすために必要な実務経験の期間は、学歴によって異なります。
<4年制大学卒以上、あるいはそれに相当する資格を持っている人>
・36ヵ月以上のプロジェクトマネジメントの経験
<高校・短大卒業、あるいはそれに相当する資格を持っている人>
・60ヵ月以上のプロジェクトマネジメント経験
ATPによるプロジェクトマネジメント研修の受講実績
「ATP(Authorized Training Partner)」とは、PMI本部が認定した教育パートナー機関のことです。PMPを取得するためには、このATPによる研修を35時間以上受講する必要があります。PMP受験時には、この公式研修の受講後に発行される修了証が必要です。
PMP受験から取得するまでの流れ
PMPを受験資格が整ったら、PMI本部に受験の申し込みをします。ここでは、申し込みの手順から受験までの流れについて解説します。
1. PMIアカウントを登録する
PMPを受験する際は、まずPMI本部の公式サイトからPMIアカウント登録をします。PMIアカウントを登録する際には、勤務先やプロジェクトマネジメントについての職歴を含めた個人情報の入力が必要です。
なお、PMI会員登録をしたい場合は、このアカウント登録の後に行いますが、PMP受験においては、PMI会員登録は必須ではありません。
<PMI会員登録について>
PMI会員に登録するには、年会費が必要です。初年度が139ドル、次年度以降129ドルです。アカウント登録後、PMI本部の公式サイトにログインし、Myページから会員登録ページに進みます。
PMI会員になると、「受験料や資格更新料の割引」「PMBOKガイドをダウンロードできる」「PDUを取得できるセミナーや講演会参加費が割安になる」「関連書籍やトレーニングツールが割引で購入できる」といった特典があります。
また、プロジェクトマネジメントに関する最新情報をチェックできたり、プロジェクトマネジメントに便利なツールやテンプレートもダウンロードできたりするなど、PMPの取得を目指す人にとっても、PMP保有者にとっても便利です。
受験料の割引分だけで初年度の年会費がまかなえますし、再受験、再々受験の際も割引になります。PMP取得後のPDU取得なども含めて考えると、会員登録をするメリットは大きいでしょう。
PMI日本支部でも任意で会員登録ができます。PMI日本支部への会員登録はPMI会員登録が必須です。PMI日本支部の年会費はPMI年会費とは別に50ドルです。
2. 受験申請
PMIアカウント登録後、PMI本部の公式サイトのトップページの「Certifications(認定)」プルダウンから、「Certification Types(認定タイプ)>PMP」を選んで、受験申請を行います。
申請の際には、前述の受験資格の報告のほか、過去に参加したプロジェクトの概要についても入力する必要があります。
3. 監査(対象者のみ)
受験申請者の中から、無作為に監査対象が選ばれます。監査対象になった場合、通知日から90日以内に「学位またはそれに相当する証明のコピー」や「実務経験として記載したプロジェクトの上司からの確認サイン」などを提出しなければなりません。
4. 受験料納付
受験申請時に入力した内容をPMI本部が確認し、受理されたら受験費用を支払います。費用はPMI会員が405ドル、非会員は555ドルです。再受験、再々受験の費用は、PMI会員が275ドル、非会員は375ドルです。
PMI本部が、納付を確認後、PMI eligibility IDを発行します。
このIDは、発行日から1年間有効で、試験の予約をする際に必要になります。
5. 試験予約
試験の予約は、PMIの試験委託機関であるピアソンVUEのサイトから行います。試験は、日本各地にあるピアソンVUE試験会場で、ほぼ毎日行われています。
試験は会場でも受けられますが、自宅や職場からオンラインでの受験も可能です。
PMP受験はPMI eligibility ID有効期限内に最大3回まで可能ですが、それ以降は1年間、受験申請ができなくなるので注意が必要です。
6. 試験・結果発表
試験はコンピューターを利用した選択式問題になっています。試験時間は4時間、問題数は全200問です。
試験結果は即日発表されます。
効果的なPMPの勉強方法
PMPの資格を取得するためには、やはりPMBOKについて学ぶしかありません。
PMBOKは、PMIが発行する「PMBOKガイド」を読めば学ぶことができます。しかし、ガイドを読むだけでは定着しづらいため、問題集にも繰り返し取り組みましょう。問題集を解くことで、試験の出題範囲の傾向も把握できるでしょう。また、問題集でわからなかった部分をPMBOKガイドから探し出すという勉強方法もおすすめです。
PMI本部の公式サイトの受験申請ページから「試験内容の概要」(2021年1月2日からの試験に関する更新)がダウンロードできますので、受験を検討している人は参考にしてみてください。
PMPは転職を検討している人にもおすすめ
今回は、プロジェクトマネジメントに関する資格である「PMP」について解説しました。
PMPは職種・業種の垣根を越えて有用な資格であるため、転職活動を検討している人にもおすすめです。取得難度は決して低くありませんが、雇用が不安定な時代にこそ役立つ資格といえるかもしれません。
グローバル企業で働くことは、グローバルに働きたい人や語学力を生かして働きたい人だけでなく、自分の可能性やワークライフバランスを求める多くの方にとって、多くのメリットがあります。
RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンでは、外資系・日系グローバル企業の案件を中心に、国内外のさまざまな優良企業の採用活動を支援しています。そのため、それぞれの方が求める最適なキャリアの選択肢をご紹介可能です。
「グローバルに働いてみたい」「より自分が輝ける場所で働きたい」「自分の選択肢を広げたい」といった方は、一度ご相談ください。業界経験豊富なコンサルタントが、みなさまのキャリアを全力でサポートいたします。