ボーダーレスだった世界は、昨年の春から日本を含む多くの国や地域で鎖国状態が続いてきました。しかし、グローバル化が進む中、日本では少子高齢化を理由とした労働人口減少で、この状況が落ち着いたら、インバウンドの外国人労働者と協働する機会がますます増えるでしょう。企業が海外に活路を見出す例も増加し、英語ができる社員の必要性はこれまでより確実に高くなります。本日は、社内研修で社員の英語力を効率よく上げる方法についてお伝えします。
目的を明確にする
企業の英語研修はまず、「何のために実施するのか」を明確にする必要があります。目的により、研修の内容・予算配分が変わるからです。
社員全体の英語力を底上げしたい
ほとんどの外資系におけるニーズはこれに当たります。公用語が英語である環境で、会社は対象者を狭めることなく、社員全員にプログラムを受ける権利を提供しています。学期が終わった後、出席率・成果・先生のコメントなどをきちんと確認しています。
モチベーション・アップとしての福利厚生の一環
外資系には、英語を使いたい・もっと向上させたい人材が集まりますので、会社によっては福利厚生の一環のように英語研修を位置づけています。簡単に言うと、採用の時に「御社には英語研修がありますか?」と聞かれた時「あります」と答えたいわけです。英語研修に参加できる資格を厳しく設けていませんし、研修成果を非常に細かくモニターしているかと問われると、そうでもありません。
選ばれた社員向け
将来の幹部候補生、海外赴任がいずれ決まるという理由で、特定の社員の英語力を強化したいことはあります。この場合、カスタマイズしたプログラムを走らせることになりますが、対象者がどのくらい早く英語ができるようになりそうか最初に予測できると、必要な期間・コストを見積もる際に便利です。
以下に、英語を上達させる上で必要となる嗜好・資質を5つ挙げてみます。上から、だんだんと優先順位が下がります。
i. 英語が好きかどうか - 英語上達の速度に最も影響を与える要因です。
ii. 継続力はあるか – 少しづつ積み上げる力がどうしても必要です。
iii. 記憶力 – 単語やフレーズを覚えるにあたり大切になります。残念ながら年齢と関係があり若い方が有利です。
iv. 音感 – 英語はイントネーションがあり音階が平らな語学ではないので、ある社員がかなり音痴だと「音」を拾えないので、発音で苦労する可能性があります。
v. 感性の豊かさ – ある単語をネイティブに対して発した時に、相手の表情や態度で「言い方が強すぎたらしい」と気づくことができるかです。鈍感なタイプですと、相手が明らかに不快感を表しているのに気がつかず、同じ単語を他の人にも使ってまた相手を不快にしてしまうことを繰り返します。
上記の全てに「問題ないです」と答えられる社員はなかなかいません。ただ、大丈夫ですという○印が4-5個あれば英語が上達するスピードは早く、1-2個の場合は上達に時間がかかると、会社側も時間・コストの両面で覚悟できます。
研修の位置づけ
現状では、外資系でも英語研修の授業料の全額を負担していることが多いですが、改善したい方針です。英語研修の出席率が悪い社員には、後で授業料の一部を給与から払ってもらうシステムの導入をお勧めします。
人間、自分のお財布が痛まない「タダ」ほど有り難みを感じないことはありません。私はこれまで在籍した2社で、仕事を理由に欠席者が多い英語研修の出席率を上げるために、新しいポリシーを導入したことがあります。出席率が80%を切ったら、会社が授業料の50%しかサポートしないのです。例えば、週2回 18:30 – 20:30のレッスン20回で、150,000円だとします。20回 x 0.8 = 16回なので、4回欠席したら、社員は75,000円を給与から引かれることになります。
出席率は27%くらい上がりましたので効果はあったといえます。もちろん、コスト管理が目的ではなく、社員に勉強してほしいために行っていたので、a) スタート時に上司には仕事を優先させないようお願いする b) 上司のサインがあれば仕事でどうしても欠席する場合は、欠席としてカウントしない など緩やかに運用していました。ちなみに30分以上の遅刻は欠席扱いです。運用を細かくしすぎると、管理に時間ばかりが必要で本末転倒になるので要注意です。
研修形態
< Withコロナの2021年>
オンライン型 – Zoomなどオンラインでレッスンを実施
かなり普及してきたオンラインで、英会話が安く受けられる仕組みです。社員は、24時間いつでも自分の都合が良い時に30分位の時間、マンツーマンで英語のレッスンを受けられます。忙しい社員にとってのメリットは、自分の都合に合わせて好きな時にレッスンを受けられることです。自分のプランを遂行する自律心が必要なので、苦手な人にとってはデメリットになるかもしれません。
会社にとってのメリットの筆頭は、価格の安さです。欧米出身のネイティブ講師とは、そもそも個人授業で全く成立しない価格帯です。フィリピン人の英語で大丈夫かという質問に対しては問題無いとお答えできます。2016年2月にフィリピン・セブ島に、当時、流行りかけていたマンツーマン英語学校の視察に行きました。知識人はかなり綺麗なアメリカ英語を話します。また英語を勉強するには、「英語」を一定期間、浴びることの方が重要なので、ネイティブ英語でないといけないと気にする必要はありません。
< ポスト・コロナ >
社内研修型 - 学校から会社に講師を派遣してもらう
学校の名前で決めずに、複数の学校から見積もりをもらうことが肝です。大手は法人相手のビジネスに慣れていますが、見積もり段階では価格が高めになりがちです。小規模の学校・個人の先生は、会社サイドのカスタマイズのニーズに応えてくれる可能性が高いです。先生にビジネス経験があるかどうかは、確認したい項目です。
短期留学
会社が提供した英語研修を通じて英語力を上げている社員に、もう少し高いレベルの英語力が必要になった場合、海外赴任が決まり短期間でなんとかレベルアップさせたい場合、フィリピン・セブ島に短期英語留学することをお勧めします。短期とはどのくらいの期間を指すか? 最低2週間と言いたいです。外資であれば、休暇を取って、もしくは転職の合間に作れる時間ですが、ここが日本企業の場合は難しいかもしれません。
とは言え、缶詰になって個人レッスン50分を7クラス毎日受けて頑張るだけの効果は早く出ますので、なんとかこの時間を確保したいです。
なぜセブ島がお勧めかの理由を挙げてみます。
i. 低コスト (英語圏は物価が高いので、午前中・午後のどちらかグループレッスンにならざるを得ない)
ii. 講師のレベルの高さ(高学歴の先生に仕事がたくさんあるわけではない現状)
iii. 安全
iv. 多様性の許容度が上がる(先進国である日本と発展途上国である国とのカルチャーショックの大きさを経験できる貴重な機会)
v. 日本との時差1時間 (できれば避けたいですが、緊急対応は夜可能)
海外への缶詰留学をする前には、最低限の文法の復習くらいはしてないと、現地でおさらいをすることになって、時間とコストが無駄になります。最低限の準備は日本国内で終わっている社員を送り出しましょう。
英語研修の目的・対象者を明らかにし、社員の受講率(出席率)を上げる工夫を行い、最後にレッスンの形態を決めることで、各企業に合った英語研修を組み立てることができます。外国人と協働することが多くなるこれからの時代を、生き抜く社員育成の一環として、英語研修を上手に取り入れることを提唱します。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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