「退職の意思を会社に伝えづらい」「できれば円満に会社を辞めたい」など、悩んでいませんか?お世話になった職場を離れるのは、周囲に迷惑をかけそうで気が引けるという人も多いことでしょう。
そこで今回は、退職交渉を円満に進めるために押さえておきたいポイントや流れについて解説します。いつ交渉を始めるべきか、交渉前にするべきことなど、綿密な準備をしておけば、円満に退職できる可能性が高まります。転職を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
退職交渉とは?
退職交渉とは、会社を円満に退職するための交渉を指します。転職などを理由に現在の仕事を離れる際には、企業と交渉を行い、規定に則った手順を踏んだ上で退職するのがベストです。
しかしながら、退職交渉は必ずしも円満に進むものではありません。場合によっては、引き止められたり、職場の上司や同僚からのイメージが悪くなったりする可能性もあります。
「辞める職場の人ともう関わることはないから、イメージダウンなど気にしない」と考える人もいるかもしれませんが、転職先の仕事内容によっては、前職の人と再び接点を持つ可能性も少なくないでしょう。たとえ他業種に転職したとしても、どこで前職とつながるかは予想できません。そのため、できるだけ良い印象のまま退職することが大切になります。
また、法的には退職する2週間以上前に申告すればいいとされていますが、企業の就業規則はこの限りではありません。中には、退職の1ヵ月以上前に申告するよう定めている企業もあるため、就業規則はあらかじめ確認しておきましょう。
加えて、退職希望が出された場合、企業は人員の補填や仕事の引き継ぎといった業務に追われることになります。トラブルを避けるためにも、内定後はなるべく早めに退職を切り出すことが大切です。
退職交渉の流れ
退職交渉をスムーズに進めるためには、あらかじめその手順を知っておく必要があるでしょう。
基本的に退職交渉は、下記のような流れで進みます。
1. 転職先から内定通知
転職先からの内定通知は、退職交渉のスタート地点ともいえます。
新しい仕事が決まらないうちに退職交渉を始めてしまうと、転職活動が難航した場合に離職期間が生まれる可能性があります。
しかしながら、退職の意思を告げてから実際に退職するまでの期間にやるべきことがたくさんあります。できるだけ余裕があったほうがいいですから、転職先から正式な内定通知をもらったらすぐに退職交渉の準備を始めましょう。
2. 現職で退職交渉開始
転職先に内定したら、いよいよ現職との退職交渉が始まります。内定直後の交渉相手は直属の上司です。
仮に、現職でプロジェクトなどを担当している最中の場合、切り出しにくい気持ちがあるかもしれません。しかし、報告を先延ばしにすればするほど、転職先と現職のどちらにも迷惑をかけることになります。
そのため、転職先が決まったらなるべく早く上司に報告しましょう。
3. 退職日の設定
退職が認められた後は、退職日を設定します。退職日は、業務の引き継ぎや後任の選定、有給休暇の消化などを勘案して決める必要があるでしょう。
また、退職日を決めた後は、転職先に入社日を伝えなければなりません。
4. 職場へ報告
職場への報告は、会社が正式に発表するまで避けるべきです。企業は社員がスムーズに退職するために、顧客へのフォローや社内への伝え方などを検討しています。あなたが先に職場の人に退職の意思を漏らしてしまった場合、トラブルにつながりかねません。
5. 業務の引き継ぎ
会社から正式な発表があった後は、業務の引き継ぎが始まります。現職の退職日や転職先の入社日に支障が出ないよう、計画的な行動を心掛けましょう。
6. 貸与品返却
すべての引き継ぎを終えた後は、現職から支給されていた貸与品を返却します。制服や作業着などはクリーニングをして返却するのがマナーです。ほかには、健康保険証や身分証明書、通勤定期券などを返却しなければなりません。見落としがちなものとして、社費で購入した文房具類も返却の対象となります。
7. 退職
業務の引き継ぎや貸与品の返却といった手続きをすべて終えれば、晴れて退職となります。
退職交渉を始める前に必要な準備
ここまで解説した退職交渉の流れは、あくまでスムーズに話が進んだ場合のもので、難航するケースもあります。退職交渉を滞りなく進めるには、まえもっていくつか準備をしておく必要があります。
まず大前提として、退職交渉は、必ず転職先が正式に決まってから行うようにしましょう。転職活動をしていると、面接時に口頭で内定を告げられる場合もあります。しかし、正式な手続きを踏んでいない内定は、後から取り消しになる可能性もゼロではありません。
退職交渉を始めたものの、内定が取り消されてしまい、退職しようにもできない状況になってしまった場合、社内での自分の立場や評判が下がるだけでなく、現職に無駄な混乱を生じさせてしまうことにつながります。
そのため、退職交渉は、転職先が正式に決まってから開始する必要があるのです。
就業規則の確認(退職のルール確認)
退職交渉を始める前に、あらかじめ現職の就業規則を確認しておきましょう。なぜなら、退職に関するルールが企業によって異なるためです。
例えば、就業規則に「退職予定日の30日前までに意思表示すること」と定められているケースがあります。民法上では「2週間前まで」が期限とされていますが、会社の就業規則を無視して退職交渉を強引に進めれば、職場の人からの印象が悪化してしまうでしょう。
そのため、退職交渉をする前に、きちんと就業規則をチェックしておくことが大切です。
有給日数の確認
有給をどう消化するかも、事前に計画を立てておく必要があります。これは、退職直前は業務の引き継ぎなどで忙しくなるためです。
有給が残っているのであれば、せっかくだから退職前に使ってしまいたいと考える人は多いはずです。しかし、自分の都合だけを優先して有給を消化しようとすれば、業務の引き継ぎに支障が出るかもしれません。
そのため、有給を使いたい場合には、退職日までのスケジュールを有給消化込みで考える必要があります。しっかりと引き継ぎを終えた後に休みを取れるように、綿密な計画を練りましょう。
退職日と最終出社日を決めておく
退職交渉の前に、退職日と最終出社日を決めておきましょう。これらの日程を決めておくことで、上司に引き止められるリスクを抑えることができるからです。
退職交渉は、難航することも考えられます。現職で活躍が著しい人材であれば、引き継ぎや人員補充に時間がかかったり、カウンターオファーと呼ばれる引き止め交渉をされたりすることも少なくありません。
しかし、退社の日取りを具体的に決めてから報告することで、上司はあなたを引き止めるのは難しいという印象を持ちます。
退職をスムーズに進めるためにも、退職日と最終出社日を決めてから交渉に持ち込むことが大切です。
なぜ退職交渉は難航する?
これまで解説したように、退職交渉は転職活動以上に難航しがちです。では、なぜ退職交渉はここまで難航するのでしょうか。その主な理由を3つ解説します。
会社の士気が下がる
もしも、連続して人が辞めている場合、会社の士気が下がる可能性は高いといえるでしょう。あまりにも辞める人の数が多いと、残っている社員も「このままこの会社にいていいのだろうか」と不安に思う可能性もあります。このような事態を懸念して、退職を引き止められるケースは少なくありません。
残った人の負担が増える
退職する人が優秀であればあるほど、その穴を埋めるために残された人の負担が増えてしまいます。仕事量が急激に多くなって残業時間などが増えれば、会社への不満が溜まり、さらなる退職希望者が現れるかもしれません。
そのため、人的リソースが精一杯という状況では、退職交渉が難航する可能性が高まるでしょう。
社内での上司の評価が下がる場合がある
上司には、企業の戦力となるように部下を育成する責任があります。そのため、部下の退職がそのまま上司の評価を下げるケースは少なくありません。部下の退職が上司の評価の低下につながる場合、交渉が難航しがちです。
よくある退職の引き止め理由
続いては、よくある退職の引き止め理由と、実際に退職を思いとどまった場合の懸念点についてご紹介します。相手の引き止め方によっては心が揺らぐこともあるかもしれませんが、後のトラブルまで考慮して冷静に対処することが大切です。
給料を引き上げる・部署を異動させる
現職に不満があって転職したい場合、「給料を引き上げる」「部署を異動させる」といった提案をされるかもしれません。労働時間や仕事量が割に合わなかったり、人間関係に悩んでいたりする場合には、この提案は魅力的に映ることでしょう。
しかし、このような条件をのんで退職を思いとどまった場合、社内の人間に「ゴネて昇給や異動をした人」と悪い印象を与える可能性があります。また、上司に提示された条件が、そのまま通るとは限りません。
たとえ給与改善や部署の異動を提案されても、かえって状況が悪化する可能性があることを忘れないようにしましょう。
後任が決まるまで/プロジェクトが終わるまで待ってほしい
あなたが重大なプロジェクトを抱えている場合、「後任が決まるまで待ってほしい」「プロジェクトが終わるまで待ってほしい」と引き止められることがあります。このような提案をされた場合、「自分がいなくなることでほかの人に迷惑をかけてしまう」と考え、退職の意思が揺らぐ人は多いのではないでしょうか。
しかしながら、この提案に従ったとしても、計画どおりに後任が決まったり、仕事が終わったりするとは限りません。早く辞めたいのに、いつまでもタイミングを逃してしまうといった可能性もあります。
そのようなトラブルを避けるためにも、引き継ぎの用意があることを具体的に伝えることが重要です。退職交渉の時点でこちらの用意した引き継ぎスケジュールを提案すれば、相手にも退職の意思が固いことを伝えられるでしょう。
退職の意思は明確に伝えよう
今回は、退職交渉を円満に進めるためのポイントをご紹介してきました。
お世話になった職場だからこそ、最後まで感謝を忘れず円満に退職したいと考える人は多いでしょう。だからといって、周囲の顔色ばかりうかがって曖昧な態度を示せば、いつまでも退職できない可能性もあります。退職交渉では、退職したいという意思をはっきり示すことも大切です。
一方で、会社があなたを引き止めるために、「カウンターオファー」と呼ばれる交渉を持ちかけてくる場合もあります。カウンターオファーについては下記のページで解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
カウンターオファー受けた際に考えるべき3つのこと