外資系企業や日系グローバル企業など、業務で英語力が求められる企業への転職で役立つのが、海外での留学経験です。生きた英会話にふれた経験があることは、期間の長短にかかわらず、いいアピール材料になるはず。企業文化や求める人材によっては、異文化圏に飛び込んでいけるチャレンジ精神も高く評価されることがあります。
この記事では、留学経験を履歴書に記載するときの書き方や、効果的なアピールの仕方などについて解説します。
留学経験を持つ転職者の強み
留学とは、慣れ親しんだ国の文化や言語から離れ、まったく異なる社会でさまざまな学びを得る経験のこと。日本在住で海外留学を経験し、「知らない土地でも生きていく力が身についた」と感じる人は多いのではないでしょうか。
さまざまな強みを身につけ、大きく成長して帰ってくる留学経験者に、企業も期待しているもの。ここでは、留学経験を持つ求職者の強みについて具体的に解説します。
目標設定能力
留学で海外に滞在できる期間は限られています。その期間内で有意義な学びを得るには、「何を」「いつまでに」「どのくらい学ぶか」を決める目標設定能力が欠かせません。事前にどこまで具体的な目標を設定できるかによって、同じ留学期間でも学ぶ幅や深さは大きく違ってくるはず。
目標設定能力は、ビジネスにおいて自身やチームのタスクに確実に対応する上で必要な能力です。自身のキャリアを長期的にとらえてゴールを定め、必要な知識やスキルを身につけていける人も、目標設定能力が高いといえます。
企業が自社の成長に貢献してくれる人材を見極めるにあたって、留学という特殊な機会に立てた目標やその到達度合いを問うのは、このためなのです。それをロジカルに説明できる人材であれば、多くの企業が欲しがるでしょう。
問題解決能力
日本の常識も日本語も通用しない土地での留学は、さまざまなトラブルに直面する可能性があります。誰かに頼らず、自分だけで問題を解決しなければならない場面にも多く遭遇するはず。そこで試行錯誤しながらトラブルへの対応を繰り返すうちに、状況を冷静に分析し、解決方法を導く力が身につきます。
仕事においても、予期せぬトラブルは付き物です。問題が発生しても焦ることなく、落ち着いて解決方法を提案できる人は、「仕事ができる人」として高く評価されるでしょう。中途採用する人材であれば、即戦力として大いに期待されます。
コミュニケーション能力
日本では、共通の文化や知識を前提として相手の気持ちや言いたいことを察するハイコンテクストなコミュニケーションが行われます。しかし、多様な民族で構成され、共通の背景を持たない海外では、言葉やボディランゲージが主体のローコンテクストなやりとりが中心です。
留学先では、「言わなくてもわかる」「みんなそう思っている」といった暗黙の了解が通用しません。はっきりと言葉にして、自分の意見を伝えなければならないのです。このような環境は、「生きた英語によるコミュニケーション」の習得につながります。
本国とのやりとり、あるいは外国人クライアントとのやりとりなど、英語ネイティブの人とのやりとりが多い外資系企業における仕事では、適切に英語を操れるコミュニケーション能力が高く評価されるはず。
転職時に履歴書の学歴欄に書ける留学経験とは?
企業で仕事をする上で財産となる留学経験ですが、その形態や期間はさまざまです。また、それを企業に提出する履歴書で、どのようにアピールすればいいか悩む人もいるはず。
続いては、履歴書における留学経験ごとの扱われ方について、詳しく見ていきましょう。
正規留学(1年以上)
正規留学とは、日本の大学や大学院に進むのと同じように、海外の大学や大学院に通って、学位取得を目指す形態の留学です。留学に際しては一定レベルの英語力が求められ、専攻分野の学問知識を高めることが目的といえます。
留学先では、現地の学生と同じように大学に通い、現地の言葉で同じレベルの授業を受けなくてはなりません。そのため、正式な学歴として、履歴書の学歴欄に記載できるのです。社会人でも会社を退職して、海外の大学で1年以上学べば正規留学と見なされます。
ただし、正規留学であっても、1年に満たない期間で途中帰国した場合は、正規留学として学歴欄に記載できなくなるので注意が必要です。
なお、正規留学には海外の大学への留学(大学留学)のほかに交換留学があり、それぞれ下記のように定義されています。
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大学留学
大学留学は、高校を卒業後、そのまま海外の大学に進学する留学のことです。1年以上在学していれば、正規留学の項目で解説したように、履歴書の学歴欄に記載可能です。 -
交換留学
交換留学は、日本の高校や大学に進学し、そこに籍を置いたまま海外の大学(姉妹校や提携校)に留学する形態です。留学先が語学学校ではなく正規の教育機関なので、決められた期間在学していれば、履歴書の学歴欄に記載することができます。
語学留学
外国語を学ぶために海外へ行く留学が、語学留学です。語学留学は留学先が正規の教育機関でなく、期間も短いなどの理由から、厳密には「研修」としての扱いです。したがって、履歴書の学歴欄には記載できず、資格・免許欄に記載します。
書き方によっては「単なる海外旅行・滞在でビジネスに役立つとは思えない」と判断されてしまう可能性も。しかし、期間は短くても、書き方によっては十分なアピール材料となりますので、情報を整理し、論理的にわかりやすく書くことを心掛けてください。
なお、語学留学には短期留学と長期留学があり、それぞれ下記のように定義されています。
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短期留学
短期留学は一般的に、1週間から3ヵ月までの短期間の留学を指しています。国によっては学生ビザを取得する必要がなく、学校や会社が休みの期間に、気軽に海外で学ぶことが可能です。 -
長期留学
長期留学は、学生ビザや就労ビザを取得して、4ヵ月以上滞在する留学を指します。留学期間が長くなれば費用はかかりますが、語学力も大きく向上するでしょう。滞在国やビザによりますが現地でアルバイトもできます。
ワーキングホリデー(ワーホリ)
ワーキングホリデー(通称:ワーホリ)は、日本と協定を結んだ国との異文化交流を目的として生まれたプログラムです。18歳から30歳までの若者が利用でき、滞在資金を補うための短期労働が可能です。
ワーキングホリデーは海外で働くことでみずからの見聞を広げることが主な目的で、学問が目的ではありません。ただし、その副産物として語学力の習得が見込めるかもしれないため、学歴としてではなく、自己研鑽のための経験のひとつとして、資格・免許欄に記載しましょう。
海外ボランティア
海外ボランティアは、医療・福祉、教育、農業、建設など、さまざまな分野で海外の人々を支援するものです。数日単位で参加できるものも多く、現地の生活や文化にふれながら社会の役に立つ活動に携われます。こちらも学歴としてではなく、自己PR欄に記載してください。
転職の履歴書に留学経験を書く時のポイント
実際に留学経験を履歴書に書くときには、どのような書き方をすればいいのでしょうか。留学の形態にかかわらず、必ず書くべき情報は「留学期間」「留学先(国)」「学校名」の3つです。
留学期間
渡航した年月日、帰国した年月日を記載し、留学期間をわかりやすく示してください。なお、留学期間だけでなく、年月日を記載する場合は和暦あるいは西暦で統一すると読みやすくなります。
留学先(国)
留学先の国の名前を記載します。国名は外務省のWEBサイトなどを参照しながら、できるだけ正式な名称で書くようにしてください。
学校名
留学先として通学した大学や大学院、語学学校などの名称を記載します。学校名については現地の正式名称で、アルファベットまたはカタカナで表記してください。応募先が日系企業の場合、カタカナ表記のほうがわかりやすいかもしれません。大学や大学院の場合は、学部名や専攻名も忘れないよう注意が必要です。
転職時の履歴書で留学経験をアピールする書き方(記載例付き)
転職時の履歴書で留学経験をアピールする際には、どのように書いたらいいのでしょうか。続いては、履歴書における効果的なアピール方法について解説します。
大学留学の場合
大学留学は、日本の大学に進学した際の書き方と同じです。高校の学歴に続いて留学内容を記載しましょう。
■留学経験の記載例
平成●年3月 | ◯◯高等学校 卒業 |
平成●年9月 | アメリカ合衆国◯◯大学◯◯学部 入学 |
平成●年5月 | アメリカ合衆国◯◯大学◯◯学部 卒業 |
交換留学の場合
交換留学の場合、高校の学歴に続いて、進学した日本の大学名を記載します。続いて、交換留学の期間と留学先を記し、卒業した日本の大学名を記載してください。
■留学経験の記載例
●年3月 | ◯◯高等学校 卒業 |
平成●年4月 | ◯◯大学◯◯学部◯◯学科 入学 |
平成●年4月 | 平成●年3月までアメリカ合衆国◯◯大学◯◯学部に交換留学 |
平成●年3月 | ◯◯大学◯◯学部◯◯学科 卒業 |
日本の大学を休学して留学した場合
日本の大学を休学して留学した場合は、下記のように記載します。
■留学経験の記載例
●年3月 | ◯◯高等学校 卒業 |
平成●年4月 | ◯◯大学◯◯学部◯◯学科 入学 |
平成●年4月 | 1年間休学し、平成●年3月までアメリカ合衆国◯◯大学◯◯学部に大学留学 |
平成●年4月 | ◯◯大学◯◯学部◯◯学科 卒業 |
日本の大学を中退して留学した場合
大学を中退して留学した場合は、下記のように記載します。
■留学経験の記載例
●年3月 | ◯◯高等学校 卒業 |
平成●年4月 | ◯◯大学◯◯学部◯◯学科 入学 |
平成●年7月 | ◯◯大学◯◯学部◯◯学科 留学のため中途退学 |
平成●年9月 | アメリカ合衆国◯◯大学◯◯学部に入学 |
平成●年3月 | アメリカ合衆国◯◯大学◯◯学部 卒業 |
日本の大学を留年して留学した場合
大学を留年して留学した場合は、下記のように記載します。
■留学経験の記載例
●年3月 | ◯◯高等学校 卒業 |
平成●年4月 | ◯◯大学◯◯学部◯◯学科 入学 |
平成●年7月 | 1年間留年し、平成●年3月までアメリカ合衆国◯◯大学◯◯学部に大学留学 |
平成●年3月 | ◯◯大学◯◯学部◯◯学科 卒業 |
退職して社会人留学した場合
仕事を辞めて社会人留学した場合は、下記のように記載します。 海外の大学に入り直すといった正規留学ではない限りは留学経験と見なされないため、学歴欄ではなく、資格・免許欄に書くようにしてください。
■留学経験の記載例
●年3月 | ◯◯高等学校 卒業 |
平成●年4月 | ◯◯大学◯◯学部◯◯学科 入学 |
平成●年3月 | ◯◯大学◯◯学部◯◯学科 卒業 |
平成●年4月 | 株式会社◯◯ 入社 |
令和●年6月 | 株式会社◯◯ 一身上の都合により退社 |
【資格・免許】 |
令和●年9月 アメリカ合衆国◯◯学校 語学留学(令和●年12月まで) |
転職時の履歴書に留学経験を書くときの注意点
転職活動で履歴書に留学経験を書くとき、どのような点に注意すればいいのでしょうか。最後に、履歴書記入時の注意点をご紹介します。
留学の目的や得たもの、学びや発見を書く
企業が知りたいのは、「留学した事実」ではなく「留学で何を得たのか」です。何を目的として留学を決意し、どんなことを学んだのか、何を得たのかを丁寧に記載するようにしてください。特に短期留学の場合は、学びや発見を詳しく書く必要があります。
留学に関連して取得した英語資格のスコアを書く
留学経験を記載するだけでは、あなたの英語力のレベルまでは伝わりません。TOEICなど留学に関連して取得した英語の資格・スコアも併記しましょう。日系企業への転職ではTOEIC600点以上、外資系企業など英語を使う機会が多い企業や日系グローバル企業の海外部門への転職では、TOEIC800点以上を持っていると有利です。
留学経験を志望先企業のビジネスに結びつけて書く
留学で得た経験をアピールにつなげるには、「留学経験が志望先企業でどのように役立つか」といった内容を記載するのがポイントです。
転職は即戦力が求められます。企業活動において自分の経験がどのように貢献できるのかを具体的に書くようにしてください。
外資系企業へ提出する場合は英文のカバーレターを添付する
外資系企業への転職を希望する場合、レジュメ(英文履歴書)と「カバーレター」と呼ばれる送付状の提出が必要になることがあります。カバーレターには、氏名、住所、書類送付日、希望職種、自己アピール、機会をもらったことへの御礼などを記載しましょう。
このカバーレターが、ビジネスで有効な英文が書けるアピールにつながります。レジュメだけでなく、カバーレターも英語で書くのがおすすめです。
アピール次第で留学経験は転職時の強い武器になる
留学経験は、外資系企業や日系グローバル企業はもちろん、昨今の日系企業でも注目される経験です。せっかくの経験を無駄にしないよう、履歴書上で効果的にアピールするようにしたいものです。
留学経験の書き方に悩んだら、RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンのコンサルタントに相談してください。一人ひとりの経歴や志望先に合った「魅せる」書き方をしっかりアドバイスさせていただきます。
グローバル企業で働くことは、グローバルに働きたい人や語学力を生かして働きたい人だけでなく、自分の可能性やワークライフバランスを求める多くの方にとって、多くのメリットがあります。
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